「熟成肉」
もう今では誰でも聞いたことのあるくらいお馴染みのワードになりましたね。
そんな熟成肉ですが、どうやら「作り方」で検索する人が多いようです。
うん、作りたいですよねー!お家で作れたらどんなにいいことか
・・・・
残念なことを言いますが、結論から言って一般の方が家庭でつくるのは絶対に無理です。
なぜなら熟成肉というものは知識と経験の積み重ねの上で、相応の設備があって初めて実現するお肉だからです。
高レベルな専門知識が必要なので、肉屋の僕でも作れません。
ただそれでも、どうしても作りたい!
この、気持ちは分かります!
実は、何を隠そう僕も実は作ろうとしたことがありました。その時の結果がコチラです↓↓
とにかく熟成肉が食べたくて、自宅でやってみた結果
僕自身、熟成肉にどはまりした時期があって、何とかしてあのナッツのような香ばしい香りを再現できないか躍起になっていた時期がありました。
でも専用の設備なんてありません、あるのは肉と冷蔵庫です。
そこで、熟成肉では無いけど一番それに近いと思った「なんちゃって熟成肉」の作り方がこちらです。
その1、新鮮な赤身肉を皿の上にひいた網の上に乗せる
その2、フワッと空気が入るようにラップする
その3、冷蔵庫の一番風があたる場所に置く
その4、極力冷蔵庫をあけずに3日放置
もう一度言いますがこれは熟成肉ではありません。なんちゃって熟成肉です。
硬さは変わりませんが、味はなんとなく香ばしいナッツのような香りがしました。
ただ、美味しかったかと言われると美味しく無いです。
だってこれって結局、どれだけ熟成肉っぽい香りがしようが、鮮度の低い肉でしかありませんから。
下手したらお腹を壊していたかもしれません・・
一応作り方は書きましたが、真似するのはオススメしません!
熟成肉は素人では絶対に作れません。
何回か試行してみて僕は気づきました。
「あーこれは無理だ、素人が手をだしていいものではないな」と
熟成肉っぽいものは作れたとしても、本物を家庭で作るのは不可能です。断言します。
そこまで言う熟成肉って一体何なの?
当然の疑問ですよね。
それでは、本題の熟成肉について見ていきましょう。
熟成肉とは
熟成肉にはハッキリとした定義はありません。
しいて言うなら
「 味や食感の向上を目的に、一定の期間、特殊な保存方法をもって低温で貯蔵された肉。」
のことです。
え?もうちょっと分かりやすく・・
【美味しくするために、特別な技で保存された肉】のことだよ
ザックリと言うとこんな感じですが。
もちろんそんな単純なものではありません。
熟成肉には大きく分けて3つの製造方法からわけられます。
これです。では一つずつ見ていきましょう。
ドライエイジングとは
この方法が本来の熟成肉というものです。
徹底管理された湿度と温度という状況下で、真空パックにいれずに、菌類の働きをもって旨味を増殖させる手法です。
簡単に言うと、肉を裸のまま冷蔵庫に置いておいて、菌に頑張ってもらって美味しくする方法だよ!
ドライエイジングを行うことで、ナッツのような芳醇な香りと、独特の柔らかさを楽しめます。
もう一度言いますが、これが本来の熟成肉です。
対して他の方法はと言うと
ウェットエイジングとは
肉を長期保存を目的に真空パックにいれて貯蔵する方法です。
これはあくまで保存方法です。でも最近ではこれも熟成肉としてうたっているところが増えましたね。
上であげたドライエイジングだと思ったらこれだった!
なんてこともよくあるパターンです。
じゃあ何で、これが熟成肉と呼ばれるのか。
お肉は骨を抜いたあとすぐに真空パックにいれられることがほとんどです。
その骨を抜いたすぐの状態というのは、死後硬直の影響で肉質がしまっていてちょっと硬いです。
そこで、1〜2週間ほど、真空パックのままおいておくことで、肉質が落ち着いて柔らかくなるのです。
でも肉質が落ち着いて柔らかくなるのは他の手法も同じで、ごく自然なことです。
それでも、こういった理由から、これも熟成肉だ!という人がいるわけですね。
うん、確かに熟成ですが、この手法はあくまで保存が目的であって、美味しくするためにやるものではありません。
なので、ドライエイジングのように香りが付いたり、特別に柔らかくなるといった効果はありません。
枝枯らしとは
これは、上二つとちょっと毛色が異なる方法なんですが、実は昔っから、というか昔は当たり前に行われてきた方法です。
真空パックが発達するまで、お肉の保存といえば枝肉(骨を抜く前の大きな肉の塊)のまま冷蔵庫にいれておくのが普通でした。
この状態で置いておくことで、骨つきのままで熟成が進み味の濃い肉になるというわけです。
ドライエイジングと似た方法ですが、菌が付着するかどうかと言う点が違いますね。
僕もこの方法は何度かやってみたんですが、やっぱり難しいです。
枝枯らしでも難しいのにドライエイジングなんて、もう無理ィィって感じです。
めちゃくちゃ奥が深い熟成技術、それでもまだ家で作りたい?
ここまで説明すれば、熟成肉がいかに一般の方が家庭でつくるという発想からかけ離れたものであることが分かってもらえるかと思います。
それでも作りたい!って人まだいますか?
僕もやっといてこう言うのは何なんですが、家庭でやると本当に危険なんでヤメてください。
お腹を壊す原因になりますし、最悪病院のお世話になることも・・
次に熟成肉を素人が作る危険性についてお話しします。
熟成肉は危険?!
熟成肉は危険だという声が最近多いです。
それはなぜか
先ほど熟成肉には定義が無いと言いましたが、熟成肉に関する規制もないためです。
一般的な熟成肉(ドライエイジング)は菌の力をかりてつくられます。
その過程でカビが発生することになるんですが、これを勘違いして
「とりあえず肉にカビをつければ熟成肉になる!」
なんていう発想になる人がいるようです。
これは文字どおり死ぬほど危険です。
ドライエイジングのカビは熟成の上で発生する酵母によるものであり、腐敗によるカビではありません。
腐敗によるカビは当たり前ですが、強烈な毒性を含んでいます。
熟成のカビと腐敗のカビを一緒にしてしまう恐れがあるので、熟成肉は危険だ!
と言われるわけですね。
こういったことから規制がないと、いつの日か食中毒事件が起こることは目に見えています。
一刻も早く国が熟成肉に関する規制に乗り出してくれることを願います。
事件が起きて完全にアウトー!みたいなことになると
真っ当に知識と技術を積み重ねて素晴らしい熟成肉を仕上げる人たちに、多大な迷惑がかかることにもなります。
熟成肉を安易に作ろうとしちゃいけないのは分かったよ、じゃあどこで買えばいいの?
そうですね、ここまで言っといて
諦めてね^^
では肉屋の名がすたります。
ここからは僕が実際に行ったことがあるお店で美味しい熟成肉が買える、食べれるお店を紹介します。
熟成肉はどこで買える、オススメのお店は?
まず規制がない以上、実績がある店、きちんとした設備投資ができているお店以外には行かない方がいいです。
どこで買えるのか、どこで食べれるのかについては、熟成肉の危険性について話した以上、僕が実際に行ったことがあるお店、買ったことがあるお店のみを紹介します。(敬称略)
関東
【中勢以 内店】
京都にある中勢以さんとは別会社のようですね。
ドライエイジングビーフの販売と、そこにあるお肉を店の奥のレストランで食べれる精肉店レストランです。
雰囲気も良くてめちゃくちゃカッコいい!
ランチで食べにいったんですが、そこまで値段も高くなくて入りやすい雰囲気でした。
お洒落に陳列された肉達。見ているだけでテンションあがります。
この日はうちもものドライエイジングステーキでした。切りたてを焼いてくれるので美味しく無いはずがないです。
【焼肉OGAWA】
仕事でもお世話になっている、小川畜産さんがやっておられる焼肉屋さん。
ドライエイジングに関して日本でのパイオニアだけあってたしかな技術をお持ちです。
仕事で熟成庫に入らせてもらったことがあるんですが、しっかりと湿度と温度管理がされた庫内に宝の山のようなドライエイジングビーフたちが並んでいます。
そして衛生面に考慮し、ドライエイジングのお肉を切るときは専用の部屋でやるという徹底した衛生管理もなされていました。
焼肉屋さんに行ったのはずいぶん前になるので、今もドライエイジングビーフを提供しておられるかは不明ですが、その時は熟成のタンをいただきました。
すっかり気に入って、小川畜産さんには熟成委託をするほどです。
関西
サカエヤ、セジール
有名な滋賀にある精肉店とレストランです。
テレビで放映されて一躍有名になりましたね。
近江牛のドライエイジングビーフだけでなく他のお肉も魅力的な素晴らしいお店です。
同じ肉屋として憧れます。
店内には迫力のドライエイジングビーフが鎮座しており、見ているだけでも面白いです。
肉好きなら必ず一度は訪れるべきです!
もっさもさのリブロース。綺麗にまわりのカビをおとせば最高のお肉が顔をだします。
通販
・さの萬(さのまん)
他にもお数多くの通販サイトがありますが、僕が購入したことがあるのはここだけなので紹介します。
この時購入したのは40日間ドライエイジングビーフのサーロインステーキ。
通販ということで、若干不安もありましたが、味はまぎれもなく本物でした。
熟成肉はまずい!そんな声もちらほら・・
僕が愛してやまないドライエイジングビーフですが、
「まずい!」なんていう声もちらほら・・・
実際この独特なナッツのような香りが苦手な方が多いです。
僕が仕入れ元のメーカーさんからもらったドライエイジングビーフをホットプレートで焼いていると、横から「くっさ!!」って言われてこともあります。
そんな言い方せんでええやん・・
悲しいですが、好き嫌いが分かれる肉であるのは事実です。
うちの店舗でも取り扱ってはみたものの全然売れない、なんてこともありました。
それでも僕は大好きなんで、常にプッシュし続けます!
まとめ
熟成についてまとめです
以上です。
どうでしょう?いつものごとく長い記事になってしまいましたが、熟成肉について理解を深めてもらえましたでしょうか?
家での作り方を検索する人が多いですが、お肉の熟成はプロの中でも一部の限られた人だけがもつ特別な技術です。
安易につくろうとしてお腹をこわしたり、病院通いになったら大問題なので、控えたほうが無難です。
でも美味しいドライエイジングビーフを買える店は全国に存在しますし、なんなら今は通販で手にはいる時代です。プロが仕上げたものを買ったほうが間違いないはずです。
魅力的な熟成肉の世界、正しい知識をもって楽しんでください!
今回の記事は以上になります。ごらんいただきありがとうございました!
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